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【特集】悪夢の再現が懸念される「大量撤去」問題 ~段階的な廃棄で〝自縄自縛〟を防ぐ

悪夢が杞憂に終わる可能性

使用済み遊技機が適正に処分されていれば、たとえ「大量撤去」となったところで社会から批判を浴びる事態は避けられる。

では、選定中間処理工場が備える処理能力はどうなのか。日工組の〝広域回収システム〟を構成するユーコーリプロなどの年間処理能力は左表のとおり。4社だけでも年間に合計約160万台を処理できる。左表に掲載したユーコーリプロの「愛知中央リサイクル工場」(愛知県)は本年3月25日に新しく稼働させた工場だ。1日の最大処理能力は1200台(年間約29万台)、総工費は9億5000万円にのぼるとされる。

「当社ではかねてから東日本リサイクル工場(埼玉)と西日本リサイクル工場(福岡)で遊技機の中間処理をおこなってきましたが、ホールや遊技機メーカーが多い愛知にも新工場を建設し、3工場体制で適正な処理に取り組んでいこうと考えました」(愛知中央リサイクル工場センター長・後藤昌史氏)

リサイクルやリユースといえども品質管理の必要性は新製品を製造する工場とまったく同じ。電子部品の大敵である静電気を室内の湿度によってコントロールするほか、作業員は導電(アース)具を身につける。新工場では既存の工場にくらべて出荷部品の検査室をより多く設けた。分解の作業スペースも大きく増加させているという。

くわえて先に紹介した2018年度の回収処理実績を鑑みれば、「野積み」といった悪夢は杞憂に終わる可能性が高い。それでもなお、「大量撤去」問題が懸念される理由は、年間の処理能力ではなく、1日の処理数にかぎりがあるからだ。

ユーコーリプロの「愛知中央リサイクル工場」(愛知県)

細心の注意を払う分解作業

関東圏に工場をもつある選定中間処理業者は、廃棄時期の集中に対処しきれない事情をこう明かす。

「リユースできる廃棄遊技機の電子部品などはわたしたち中間処理業者にとって製造元が買い取ってくれる大切な商品のひとつです。破損させてしまえばそのぶん価値が下がります。熟練の作業員が細心の注意を払って作業しなければなりません。とくに遊技機は製造元や種別、もっと言えば、機種ごとでも分解方法が違うため、中小の処理業者では1日に200台ほどの処理数が限界です。もちろん、廃棄時期の集中にあわせてアルバイトを雇えばいいという考え方もあるのかもしれませんが、不慣れなアルバイトでは効率が悪く、作業場や倉庫の不足もあって限界を超える量は断るしかありません」

新台が思うように売れない昨今、廃棄に回される遊技機の数も減っていき、中小の選定中間処理工場では人員や作業場を削減する方向にあるらしい。新工場を稼働させたユーコーリプロにおいてさえ、将来的にはサンド設備などの中間処理も担っていきたいとしている。廃棄遊技機が増加すると予想される時期の収益ばかりに期待した人員の確保や設備投資はやはり現実的な選択ではないだろう。

把握が急がれる倉庫の保管数

旧規則機の「大量撤去」問題が懸念される理由はもうひとつ。市場にいまだ残る230万台は、現状なお各ホールに設置されている旧規則機の数であり、倉庫での保管数までは含まれていない。全日遊連は4月3日に組合員のホールが保有する旧規則機を調査すると表明したが、遊技機の廃棄問題に詳しい業界関係者は次のように警戒感を募らせた。

「産業廃棄物はすでに海外へ輸出できる時代ではありません。国内の選定中間処理工場から受け入れを拒まれた遊技機は、製造元やホールが責任を分担するかたちで管理し、保管しておくしかないでしょう。もしも製造元とホールとのあいだで廃棄すべき遊技機を押しつけあうような事態になれば、闇ルートへの流出さえ懸念されてきます。不正使用を目的に取得した大量の遊技機が警察当局に押収される。これこそまさに悪夢です」

ましてや、新規則機への入れ替えではなく、廃業を選ぶホールが3000店にもおよぶのではないかとの推測もあり、これらのホールが自らの資産を非選定中間処理工場や闇ルートへ転売してしまうケースも考えられる。

新型コロナウイルスの影響による営業の自粛や時短営業といった苦境をどうにかしのぎ、経営を継続する予定のホールでも、来年2月までに新規則機が十分に揃うとはかぎらない。部品調達の遅れにともなう新台の販売延期や保安通信協会の型式試験も新規予約を一時的に停止すると通達された。

新規則機にくらべて人気が高い旧規則機の運用にこだわり、設置期限の前後になってようやく下取りや廃棄処分を望めばどうなるか。選定中間処理工場の受け入れには限界があり、急増する需要に新台の生産体制も追いつかない。ホールにとっては一時保管場所の費用負担がかさむだけ。すなわち〝自縄自縛〟となる状況が危惧される。

日工組はこうした事態を回避するため、本年4月1日、パチンコチェーンストア協会などにも文書で旧規則機の早期排出をうながした。推進委員会も「大量撤去」問題の取り組みを協議していく予定だ。

何よりもまずは新型コロナを終息を待つばかりだが、新規則機への完全移行を計画的かつ段階的にすすめつつ、来年2月こそは心機一転、新しいスタートを華々しく飾りたい。

※本稿は2020年4月28日付け「日刊遊技情報」に掲載した記事をweb用に編集したものを掲載しております。


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